コラム

第17回 『脈診その2』について

こんにちは、ヒロマリです。
今回は前回の続き、『脈診』の方法と28種の“脈象“について中医学の観点からお話ししたいと思います。

まず、脈のとり方から。
古人は、脈診は早朝が最もよいと言っています。というもの、早朝は食事・運動などの影響を受けず、比較的安静で、経脈や気血の流れに邪魔になるものが少なく鑑別しやすいからです。
でも、病気の人を診察するのは随時なので、現代では時間にこだわらない方がよいとなっています。

大事なのは、患者さんを休ませて気血を平静にし、脈を診る側も気を静め、呼吸を整えてから行うことです。

次に体位ですが、患者さんは静かに横になるか椅子に腰かけ、手のひらを上に向け、腕が心臓と同じ高さになるように腕の下に軟らかい枕を敷きます。
脈を診る側は患者さんの横に座り、左手で患者さんの右手を、右手で患者さんの左手を按診(圧をかけて触る)します。
体位が不正確だと、局部の気血の運行に影響し、脈象にも影響が出てしまいます。

按診する部位は、まず中指で橈骨茎状突起(とうこつけいじょうとっき:手首の親指側の骨の出っ張り)に触れ、続いて人差し指と薬指をその隣に置きます。3本の指を平らにして高さを揃え、指の腹で脈に触れられるようにします。
なお中医学では指の置く場所に名前がついていて、それぞれ寸:人差し指、関:中指、尺:薬指といいます。後で出てくるので覚えておいてください。

3本の指で同じ力で按診することを“総按”、1本の指で一部の脈象を按診することを“単按”といいます。臨床では、総按と単按を組み合わせて用います。
ちなみに乳幼児は拇指(ぼし:親指)で按じます。
次に指の力についてです。
軽く皮膚の上に置いて脈をとることを「浮取」、力を入れて筋骨を按じることを「沈取」、軽からず重からず脈をとることを「中取」といいます。

また、診察する人が自然に調えた自分の一呼吸の時間を使って、患者さんの脈の回数を数えることを“一息”といいます。28種の脈象のところで出てくるので覚えておいてください。

最後に古人が脈をとる時には50の脈拍を数えたと言います。脈象を確実に見極めるためには必要で、一般には3~5分をかけます。結構長いですよね(^^;
それだけ『脈診』が大事なんだということなんですね!

では、ここからは28種の脈象についてです。
最初に正常な人の脈象から紹介します。「平脈」といい、寸関尺の三部に脈があり、回数は一息に4回(一分間に約72~80回)で、浮でも沈でもなく、速からず遅からず、大でも小でもなく、落ち着いてゆったりしています。

28種の脈象は「病脈」といい、下記 表にまとめてみました💡
『脈診その1』にも書きましたが、疾病は非常に複雑なので、脈象も一種の脈のみが見られることはまず少ないです。例えば、「表熱証」は“浮数脈”、「肝が虚」だと“弦細脈”などになります。

読んでいても実際に触れてみないと分からないと思いますので、一度周りの人の脈をとってみて下さい♪

大事なところだけをお伝えしたかったのですが、『脈診』も奥が深く2回に渡ってしまいました(^▽^;)
今回もお読みいただきありがとうございました💛



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分類 脈名 脈象 主病
浮脈類 軽く按じるとすぐ得られ、強く按じるとやや弱くなる 表証か虚証を主る
指に波動が押し寄せる感じで、来る時は盛んで、去る時は衰える 熱邪亢盛
浮かつ細軟 虚・湿を主る
浮散で根底なし、リズム不整 元気離散、臓腑の気が絶えようとしている
浮大で中空、ネギの管のよう 血が失われ、陰が損傷している
弦急で中空、太鼓の革を按ずるよう 精血虚寒
沈脈類 軽く按じると得られず、強く按じて初めて得られる 裏証
強く案じて筋肉を押し分けて、骨に当たる程になって初めて得られる 邪閉・厥証・激痛
強く按じると実で大きく、弦で長い 陰寒内実・脱腸
軟らかく細い、かつ沈 気血不足
遅脈類 脈が来るのは遅い、一息4回に足りない 寒証
一息4回で、脈が来るのは緩慢 湿証・脾虚
小刀で竹を割るように往来が渋滞しがち 気滞血瘀・精傷・血少
脈が来るのは緩慢で、時に一拍止まるが、止まり方は一定しない 陰盛気結・寒痰・血瘀
数脈類 一息5回以上になるもの 熱証・虚証を主る
脈が来るのは急数で時々一拍止まるが、止まり方は一定しない 陽盛実熱・気滞血瘀
一息7回以上になり、脈が来るのは急疾 陽極まり陰が尽きる、元気が脱する
脈形が豆のようで、拍動の幅が狭く、滑数、有力 痛・驚
虚脈類 「浮取」すれど無力、「中取」すると空虚なもの 虚証、多くは気血両虚
極めて細く、極めて軟らかく、有るようで無く、回数がはっきりしないもの 陰陽気血の諸虚・陽虚の危篤な症候
糸のように細くて指にハッキリと応じるもの 気血両虚・諸虚・労損・湿を主る
脈が拍動しては途中で止まり、しばらくしてまた動き出す。止まり方は一定している 臓気衰弱・打撲・損傷
長さが短く、寸関尺全部の位置を満たせないもの 有力:気鬱を主る、無力:気損を主る
実脈類 「浮取」、「沈取」ともみな有力なもの 実証
そろばんの玉のように往来が滑らかで、指に円滑に応じるもの 痰飲・食滞・実熱
張りつめた引き縄や網のように緊張しているもの 寒・痛・食滞
長さがまっすぐで本来の位置(寸関尺)を越えるもの 陽気有余・熱証
まっすぐ長くて、まるで琴の弦を弾いているよう 肝胆の疾患・痛証・痰飲・マラリア


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